ほどいた手をもう一度つなぐ夢
別れたはずの相手と並んで歩きながら、夢の中の二人は、別れた理由を一度も口にしないまま、もう一度付き合うことに決めています。復縁する夢が映すのは、相手を取り戻したい願いだけでなく、あの終わり方にまだ自分が納得していないという気持ちです。夢の中のやり直しは、閉じたはずの話に、自分の手で続きを書き足そうとする動きとして描かれます。
この夢の重心は、相手の気持ちより、戻ると決める自分の側の条件にあります。元彼に迫られて頷く夢でも、自分から元カノに連絡する夢でも、夢の中で何を許して戻ったかが、その条件の中身になっています。目の前で相手が笑っていたとしても、夢が二人のこの先の行方まで決めているわけではありません。
よりを戻す相手と戻り方
- 元彼と復縁する - 別れた元彼と、付き合っていた頃によく通った店に並んで座り、また付き合おうと言い合います。昔の店という舞台に込められているのは、別れの理由より先に、二人でいた頃の居心地の良さを取り戻したい気持ちです。
- 元カノと復縁する - 元カノがあっさり戻ってきて、何事もなかったように同じ部屋で暮らし始めます。説明も謝罪も省かれた再出発は、別れの時に言えなかった言葉を、言わずに済ませたいという思いと結び付いています。
- 元カレに復縁を迫られる - 何度も電話をかけてきて、やり直そうと詰め寄ってくるのは元カレです。逃げ場のない誘いの裏にあるのは、自分で決めたはずの別れを、他人の押しで揺さぶられることへの警戒です。
- 迫られた復縁を断る - 詰め寄ってくる相手に、夢の中の自分ははっきりと首を横に振ります。断る声の大きさに、現実ではまだ言葉にしていない線引きの強さが映ることもあります。
- 自分から復縁を申し込む - 自分のほうから元恋人に連絡し、もう一度会ってほしいと頼み込みます。頭を下げる側に回る筋書きに描かれているのは、別れの責任の一部を自分の側に引き取ろうとする動きです。
- 元夫と復縁する - 離婚した元夫と同じ食卓に着き、もう一度一緒に暮らそうと決めます。届け出や引っ越しの手続きがすっかり省かれた筋書きは、家族として過ごした年月を、書類とは別の場所で惜しむ気持ちと地続きです。
- 戻ってから後悔する - 念願の復縁を果たしたはずなのに、夢の中の二人はすぐにまた同じことで言い争い始めます。やり直した途端に昔の不満が戻ってくる筋書きは、思い出の中で磨かれた関係と、実際に付き合っていた頃の関係との差を突き付けます。
- 相手に新しい恋人がいるのに戻ってくる - 元恋人の隣には新しい恋人がいるのに、相手はその人を置いて自分のもとへ戻ってきます。もう一度選ばれたい願いと、誰かから奪う形になる後ろめたさが、一つの筋書きの中に同居する形です。
- 今の恋人がいるのに元恋人とよりを戻す - 付き合っている人がいる身で、夢の中では元恋人と手をつないで歩いています。その元恋人の顔に、今の関係の中でまだ口にしていない望みが、昔の相手の姿を借りて映ることもあります。
- 周りに復縁を反対される - よりを戻したと打ち明けた途端、友人や家族がそろって顔を曇らせます。周りの反対の声は、自分の中にある迷いを、外の人の口を借りて言わせたものです。
- 復縁して結婚する - よりを戻した元恋人と、そのまま結婚式を挙げています。式場の場面に託されているのは、一度途切れた関係に、今度こそ途切れない形を与えたい願いです。
終わった話に続きが書き足される
元カレの夢や元カノの夢は、昔の恋人という人物を通して、付き合っていた頃の自分や、その関係で身に付いた癖を見つめ直す夢です。復縁する夢では、焦点が人物から、もう一度付き合うと決める瞬間へ移ります。再会の夢が懐かしい人と顔を合わせるところまでを描くのに対し、復縁する夢は、その先の約束の交わし直しまで踏み込みます。
別れる夢が関係の幕の下ろし方を描くとすれば、復縁する夢は、一度書き終えた結末を書き換えようとする夢です。結婚する夢も二人が結び付く場面を描きますが、そこにあるのは新しい段階への統合と決断で、復縁する夢が向かうのは、前へ進むことと元へ戻ることが入り混じった場所です。復縁する夢の読み分けでは、相手が誰だったかと同じくらい、夢の中でどんな約束を交わしたかが問われます。
返しそびれた合鍵
夢の中でまだ返しそびれている合鍵や、改札の向こうで手を振る見慣れた横顔、昔と同じ着信音は、別れから時間が経っても片付いていない約束事を、目に見える物の形にしています。元恋人から久しぶりに連絡が来た週や、共通の友人から相手の近況を聞いた日には、その知らせが夢の中で復縁の場面に組み立て直されます。相手に新しい恋人ができた、あるいは結婚したと知らされた後の夢でも、自分から戻る筋書きや、相手が戻ってくる筋書きは珍しくありません。
今の恋人との関係が行き詰まっている時や、新しい誰かと付き合い始めたばかりの頃の夢では、比べる相手として昔の恋人が呼び出され、今の関係の足りない所と足りている所が並べられます。辞めた職場から戻らないかと声をかけられた日の夢で、元恋人の部屋の前に立ち、呼び鈴に指をかけたまま動けずにいるのは、仕事という恋愛の外の場所で迫られた迷いが、復縁の筋書きを借りた場面です。
投資モデル - 関係をつなぎ留める三つの重り
投資モデルは、人がなぜ一つの関係にとどまるのかを説明しようとする社会心理学の理論です。関係を続けようとする気持ちの強さ (コミットメント) は、関係への満足度、ほかの相手や一人の暮らしといった代わりの選択肢の質、関係に注いできた時間や労力などの投資の大きさの三つで決まると考えます。どれか一つが低くても、三つを合わせた重さが大きければ関係は続くという見方が、この理論の要です。
三つの重りに照らすと、復縁する夢の場面は三つの向きに振り分けられます。昔の店や旅先の思い出が丁寧に描かれる夢は満足の記憶と、今の恋人や一人の暮らしが色あせて見える夢は代わりの選択肢を低く見積もる動きと結び付いています。付き合った年月や一緒に選んだ家具を惜しむ夢には、注いできたものを手放したくない気持ちが重なります。この理論は夢を対象にしたものではなく、ここではその三つの重りを復縁の夢と引き合わせているだけです。
思い出の中で磨かれた顔
過去の出来事を、実際に過ごした時より良いものとして思い出す傾向は、英語で rosy retrospection (バラ色の回顧) と呼ばれ、心理学で提案されている現象の一つです。復縁する夢に出てくる元恋人が、出会ったばかりの頃の優しい顔をしているなら、それは思い出の中で磨かれた顔です。戻ってすぐに後悔する夢は、その磨かれた顔と、実際に付き合っていた頃の手触りとの差を、夢の側から確かめ直す筋書きです。
別れた後に復縁し、また別れることを繰り返す関係は、英語で on-again, off-again relationship と呼ばれます。夢の中で同じ相手と別れては戻る場面が何度も続く時、その往復は、二人の関係の意味がまだ自分の中で定まっていないことを、行き来の回数で描いています。別れの原因になった出来事が一度も話題に上らないまま関係が再開する夢には、同じ所でまたつまずく怖さが、話し合ってから戻る夢には、終わり方を自分なりに整理し直したい動きが込められています。
打ちかけては消す一文
昼休みに公園のベンチに腰掛け、元恋人の名前を画面に出し、元気にしているかと尋ねる短い文を打ちかけては消します。送るかどうか決められないその一文は、夢の中で交わされた復縁の約束と同じ迷いを抱えています。夢の中で差し出された手に触れかけた指は、いま送信のボタンの上で止まっている指と、同じ形に曲がっています。
夢の中で戻ってきた人の顔立ちは、別れた日のものより、思い出の中で少しずつ形を変えてきた面影に近いものです。その相手と交わした約束を、現実の二人がなぞる決まりはありません。昼休みが終わる頃、下書きの欄は空になっていて、夢の中で握り返した手の感触だけが指先に戻ってきます。